地盤調査という言葉は同じでも、橋やダムの現場と、戸建住宅の敷地では、使われる機械も調べる深さも大きく異なります。土木ではボーリングと標準貫入試験が基本とされ、戸建住宅ではスクリューウエイト貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験、以下SWS試験)が広く使われてきました。この違いは、単なる慣習ではなく、建物が地盤に与える荷重の大きさ、影響が及ぶ深さ、調査にかけられる費用という三つの条件から説明できます。本記事は、公表されている規格の紹介資料や自治体の案内の範囲で、二つの調査の違いを整理します。
同じ地盤調査でも、目的と規模が違う
公共の土木工事では、道路、橋、堤防、ダム、トンネルといった構造物の設計と維持管理のために、地盤の構成を詳しく把握します。全国地質調査業協会連合会(全地連)の説明では、地質調査業は地下の地質・土質・基礎地盤・地下水の「形」「質」「量」を明らかにする仕事であり、既存資料の収集から現地踏査、ボーリング、原位置試験と室内試験、解析・判定、報告書の作成へと進みます。構造物が大きいほど、地盤に伝わる荷重も、影響が及ぶ深さも大きくなるため、支持層の位置や地層の重なりを深い位置まで確認する必要があります。
一方、2階建て程度の戸建住宅は、荷重が小さく、基礎が影響を与える深さも限られます。調査の目的は、敷地の地盤が建物を支えるのに足りるか、不同沈下のおそれがないか、改良が必要かを判断することです。1棟ごとの調査に大きな予算を充てにくいため、小型の機械で短時間に実施でき、費用を抑えやすい手法が選ばれてきました。この前提の違いが、手法の違いにそのまま表れています。
ボーリングと標準貫入試験で分かること
ボーリング調査は、地盤に孔を掘り進めながら、土や岩の試料を採取し、孔内で試験を行う調査です。標準貫入試験は、この孔を使って行う代表的な原位置試験で、JIS A 1219に規定されています。全地連の技術発表の記載によれば、質量63.5kg±0.5kgのハンマーを760mm±10mmの高さから自由落下させ、ロッド先端のサンプラーが地盤に300mm貫入するまでに要した打撃回数をN値として測定します。N値が大きいほど、その深さの地盤が硬く締まっていると読むのが基本です。
この方法の利点は、深さごとにN値が得られることに加え、サンプラーに入った試料を目で確認できる点です。砂なのか粘土なのか、礫は混じっているのかを、実際の土で確かめられます。採取した試料を室内に持ち帰れば、粒度や含水比、強度などの試験もできます。得られた情報は、ボーリング柱状図にまとめられ、設計者が支持層の選定や杭の長さの検討に使います。
反面、機械と人員、足場が必要で、費用と日数がかかります。埼玉県が公開している戸建住宅の液状化対策の案内では、ボーリング調査の費用の目安が約30万円とされています。敷地の広さや搬入路の条件によっては、機械の設置が難しいこともあります。
SWS試験が戸建住宅で使われてきた理由
SWS試験は、先端にスクリューポイントを付けたロッドに荷重をかけ、荷重だけで沈む量や、沈まなくなった段階で回転を加えて貫入した量を記録し、地盤の強さを推定する試験です。日本建築総合試験所の資料によると、JIS A 1221は2020年10月26日に改正され、試験名称が「スウェーデン式サウンディング試験」から「スクリューウエイト貫入試験」に変わりました。略称は従来どおり「SWS試験」で、Wswは静的貫入最小荷重、Nswは換算半回転数と定義され、硬い表層で事前削孔を行えることも明記されました。
小型の機械で運べ、孔を大きく掘らず、短時間で終わるため、費用を抑えやすい点が住宅に向いています。埼玉県の案内では、深さ5m~10m程度の浅い地層を対象とするスウェーデン式サウンディング試験の費用の目安は約5万円とされています。住宅の基礎が影響を及ぼす範囲の地盤を、手頃な費用で多くの敷地について調べられることが、普及の理由と考えられます。
ただし、土そのものを採取しないため、土質は貫入時の感触や音、周辺の情報から推定することになります。礫や硬い層があると貫入が止まり、その下の状況は分かりません。調査の深さも、ボーリングに比べて浅い範囲が中心です。液状化の判定を行う場合は、サウンディング試験に土質試料の採取と試験を加える方法が使われ、埼玉県の案内では費用の目安が約10万円とされています。
二つの調査を、荷重・深さ・費用で並べて読む
ここまでの内容を、公表資料で確認できた範囲で表にまとめます。表の費用は一般的な場合の目安で、敷地や調査の内容によって変わります。
| 項目 | ボーリング+標準貫入試験 | SWS試験(スクリューウエイト貫入試験) |
|---|---|---|
| 規格 | JIS A 1219 | JIS A 1221(2020年10月26日改正で名称変更) |
| 主な利用場面 | 土木構造物、中高層建築など | 戸建住宅・小規模建築物 |
| 試料の採取 | できる | できない |
| 得られる情報 | 深さごとの土質、N値、地下水位 | 貫入時の荷重と回転数 |
| 費用の目安(埼玉県の案内) | 約30万円 | 約5万円(液状化判定は約10万円) |
| 注意点 | 機械と日数が必要 | 浅い範囲が中心。礫や硬い層で貫入が止まる |
2026年10月時点、規格紹介資料・自治体資料に基づく。最新情報は規格票と各発注者の仕様書で確認してください。
表を見ると、二つの調査は優劣ではなく、役割の違いとして理解するのが適切です。大きな荷重を深く支える構造物には、試料まで確認できる調査が必要で、小さな荷重を浅い範囲で支える住宅には、簡易な調査が合理的です。逆に、住宅であっても、地盤が複雑な土地や、液状化が心配される土地では、追加の調査が検討されることになります。
調査結果を受け取るときの確認点
報告書を受け取ったとき、専門家でなくても確認できる点があります。まず、どの手法で、どこを何か所調べたのかです。敷地の広さに対して調査地点が少ない場合、地点の間の地盤の変化が反映されないことがあります。次に、調査の深さです。軟らかい層が深い位置にある場合、浅い調査では見逃されることがあります。さらに、改良が必要とされた場合は、その判断の根拠となった数値と、改良の範囲や工法が示されているかを確認します。
判断に迷う場合は、複数の業者に相談して見積りを比較することが、埼玉県の案内でも勧められています。調査結果の解釈や改良の要否については、設計者や調査会社などの専門家に確認することが前提です。本記事は公表資料の整理であり、個別の土地の地盤評価や工法選定の助言ではありません。
