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本ページの数値は、国土交通省・全国地質調査業協会連合会などの公表資料の時点のものです。業者数や制度は更新されるため、最新の内容は各リンク先でご確認ください。
地盤調査・地質調査業とは何を行う仕事か
地盤調査・地質調査業は、建物や橋、道路、ダム、トンネル、造成地などをつくる前に、地面の下がどのような土や岩でできているかを調べ、その結果を設計や施工に使える形に整える仕事です。全国地質調査業協会連合会(以下、全地連)の説明では、地下の見えない部分である地質・土質・基礎地盤・地下水を対象に、その「形」「質」「量」を明らかにする業務とされています。地表から見ただけでは分からない情報を、掘削や試験によって数値と図に置き換えるのが、この業界の役割です。
業務の進み方は、全地連の説明では、既存資料の収集、現地踏査、物理探査、ボーリング、原位置試験と室内試験、データ整理、解析・判定、報告書の作成という順序で示されています。現場で土を採取したり、棒を地中に押し込んで抵抗を測ったりする「調査」の部分だけでなく、得られたデータから地盤の強さや沈下の見込み、地震時の揺れ方や液状化の可能性を判断する「解析」の部分までを含む点が特徴です。
調査の結果は、ボーリング柱状図や地質断面図、試験結果の一覧表、報告書として納品されます。設計者はこの結果を受けて、基礎の形式や深さ、地盤改良の要否を決めます。つまり地盤調査は、建築や土木の中でも最も上流にあたる工程であり、ここで得られる情報の精度が、その後の設計と工事の前提になります。
- 調査現地で土や岩を採取し、原位置で強さを測る
- 解析試験値から支持力・沈下・液状化を判定する
- 設計へ基礎形式や改良の要否を決める前提になる
地質調査業者登録規程と登録業者数の推移
国土交通省は、測量法、建設コンサルタント登録規程、地質調査業者登録規程に基づいて国土交通大臣に登録している業者数を、毎年度末の時点で集計して公表しています。地質調査業者登録規程は、地質調査業を営む者が登録を受ける制度を定めたもので、全地連の説明によれば、登録の要件には専任の技術管理者の配置と、資本金500万円以上かつ自己資本1,000万円以上という財産的基礎が含まれています。技術管理者には、技術士や、関連学科の卒業者で実務経験を積んだ者、国土交通大臣の認定を受けた者などが定められており、現場の調査・計測を管理する者としては、全地連が実施する地質調査技士資格検定の合格者が認められています。
国土交通省が2025年8月22日に公表した、令和6年度末(2025年3月末)の登録状況は次のとおりです。地質調査業は1,221業者で、この年度の新規登録は17業者、登録を消除した業者は26業者でした。前年度比では9業者(0.7%)の減少で、平成17年度のピークである1,390業者から、概ね横ばいで推移していると説明されています。同じ公表で、測量業は11,140業者で平成15年のピーク(14,750業者)から21年連続の減少、建設コンサルタントは3,930業者で平成17年のピーク(4,214業者)から概ね横ばいとされています。
| 登録の区分 | 登録業者数(令和6年度末) | 新規登録 | 登録消除 | ピーク時の業者数 |
|---|---|---|---|---|
| 地質調査業 | 1,221業者 | 17業者 | 26業者 | 1,390業者(平成17年度) |
| 建設コンサルタント | 3,930業者 | 170業者 | 172業者 | 4,214業者(平成17年) |
| 測量業 | 11,140業者 | 283業者 | 456業者 | 14,750業者(平成15年) |
2026年10月時点、国土交通省の公表資料(令和7年8月22日)に基づく。最新情報は国土交通省のページで確認してください。
ここで注意したいのは、この数字が「国土交通大臣に登録している業者」の数だという点です。都道府県知事の登録など、別の枠組みの業者は含まれません。また、会社によっては建設コンサルタントや測量業の登録を併せて持つため、同じ会社が複数の区分に計上されることがあります。業界の規模を会社数だけで比べるのではなく、後述する市場の構造とあわせて読むことが重要です。
全国地質調査業協会連合会(全地連)の役割
全地連は、全国10地区の地質調査業協会と賛助会員を正会員とする、全国規模の地質調査業の連合組織です。1962年に「全国地質調査業協会連合会」として設立され、1964年に社団法人化、2012年に一般社団法人へ移行しています。10地区は、北海道、東北、北陸、関東、中部、関西、中国、四国、九州、沖縄です。協会の紹介資料では、地質調査会社の会員が約600社、賛助会員の企業が約40社と記載されています。国土交通省の登録業者数(1,221業者)と会員数が一致しないのは、会員が地区協会に所属する地質調査会社に限られるためで、両者は別の集計です。
主な事業は、技術者の育成と資格制度の運営、積算に関する資料の整備、地質リスクに関する調査検討、ボーリング柱状図の作成やコア取扱いの要領の公表、電子納品や地盤情報への対応、災害時の技術支援、機関誌「地質と調査」の発行などです。資格制度には、地質調査技士、地質情報管理士、応用地形判読士、地質リスク・エンジニアがあり、道路防災点検技術者のための講習会も開かれています。
業界団体が積算や要領を整えることは、発注者と受注者が同じ前提で調査内容と費用を話し合うための土台になります。柱状図の書き方が統一されていることで、異なる会社が実施した調査結果を並べて読めるようになり、データベースへの登録も容易になります。個別企業の技術力とは別に、こうした共通基盤を整える組織があることが、この業界の特徴の一つです。
公共(土木・インフラ)と民間(住宅・建築)の二つの市場
地盤調査の仕事は、発注者の種類によって大きく二つの市場に分かれます。一つは、国や自治体、高速道路会社などが発注する公共の土木・インフラ分野です。道路、橋、河川堤防、ダム、トンネル、港湾、斜面防災などの計画や設計、維持管理に必要な調査で、1か所あたりの調査規模が大きく、ボーリングや標準貫入試験、室内土質試験、物理探査などを組み合わせるのが一般的です。全地連の説明では、建設事業分野が地質調査事業量の9割以上を占め、業務の約70%は社会資本整備に関わるとされています(ただし、この市場データは古い統計に基づくと注記されています)。公共の調査は、分離発注を原則とする元請型の受注産業で、仕様書や積算基準、電子納品要領に沿って成果が作られます。
もう一つは、住宅や中小規模の建築物など、民間の建築分野です。特に戸建住宅では、1棟ごとの調査に大きな予算をかけにくいため、小型の機械で短時間に行える簡易な調査が中心になります。調査会社だけでなく、調査結果を使って保証を提供する事業者や、地盤改良工事を担う事業者が加わり、調査・保証・改良が組み合わさった独自のビジネス構造が形成されています。比較表のページでは、前者を「地質調査・ボーリングの主要事業者」、後者を「住宅向け地盤調査・地盤保証の主要プレイヤー」として別々に整理しています。
二つの市場は、使う機械も、報告書の形式も、費用の桁も異なります。ところが、液状化のような災害リスクを論じる場面では、公共の調査で蓄積されたボーリングデータと、住宅の調査で蓄積された膨大な件数のデータの両方が使われるようになってきました。両者がつながる動きは、地盤データのページで詳しく取り上げます。
住宅瑕疵担保履行法と地盤調査・地盤保証の関係
住宅分野の地盤調査を理解するうえで、押さえておきたい制度があります。住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)は、新築住宅の売主等に、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、10年間の瑕疵担保責任を負わせています。ただ、売主等が倒産するなどして資力が不足すると、この責任が履行されません。構造計算書偽装問題を受けて、国は「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(住宅瑕疵担保履行法)を制定しました。国土交通省の資料によると、この法律は平成19年5月30日に公布され、建設業者や宅地建物取引業者に資力確保の義務を課す部分が平成21年10月1日に施行されています。
資力確保の方法は、保証金の供託、または住宅瑕疵担保責任保険への加入です。保険は、国土交通大臣が指定する保険法人が、施工段階の検査と一体で引き受けます。住宅瑕疵担保履行法そのものは、地盤調査を義務づける法律ではありません。しかし、基礎や地盤に関する不具合が構造耐力上主要な部分の瑕疵に関わり得ること、また建築基準法施行令第93条が、地盤の許容応力度や基礎ぐいの許容支持力を地盤調査の結果に基づいて定めるとしていることから、実務では新築住宅の設計に先立って地盤調査が行われています。
民間の地盤保証は、こうした制度の周辺で生まれたサービスです。調査会社が出した調査結果と、それに基づく改良工事の内容を前提に、地盤の不同沈下が起きた場合の修復費用を保証する仕組みが、住宅向けに広く提供されています。保証の範囲や期間、免責事項は事業者ごとに異なるため、住宅向けの比較表のページでは、保証の有無を事実項目として整理するにとどめ、条件の比較は各社の約款を直接確認することを前提にしています。
調査から解析、設計に至る流れ
地盤調査の成果が設計に届くまでの流れは、公共・民間を問わず、おおむね次の段階に整理できます。実際の案件では、計画段階や地盤条件によって、調査の手順や組み合わせが変わります。
- 既存資料の収集と現地踏査過去のボーリング柱状図、地形図、地質図、近隣の工事記録を集め、現地の地形や地下水の状況を確認します。
- 調査計画の立案建物や構造物の規模、想定される地盤条件に応じて、調査の位置、深さ、手法を決めます。
- 現場調査ボーリングや標準貫入試験、スクリューウエイト貫入試験、物理探査などを実施し、土や岩を採取して地盤の強さを測ります。
- 室内試験採取した試料を試験室に持ち帰り、粒度、含水比、強度、圧密などを測定します。
- 解析・判定試験結果から支持力、沈下量、液状化の可能性などを検討し、地盤の評価をまとめます。
- 報告と設計への引継ぎ柱状図、断面図、試験結果、考察を報告書にまとめて納品し、設計者が基礎形式や改良の要否を決定します。
調査の手法ごとの特徴と限界は、続く「調査手法の整理」のページで詳しく解説しています。重要なのは、どの手法も地面の下を直接すべて見ているわけではなく、限られた地点の情報から全体を推定している点です。調査地点の間にある地盤の変化は、地質の知識と経験で補うことになり、そこに技術者の判断が入ります。
この業界を読むときの三つの視点
地盤調査業界の情報を読むとき、次の三つの視点を持つと、数字や用語の意味を取り違えにくくなります。
視点1:登録業者数と事業規模は別の話である
登録業者数は1,221業者という概ね横ばいの数字ですが、これは国土交通大臣に登録している事業者数であり、個々の会社の売上や従業員数、技術者の人数を示すものではありません。大手の総合コンサルタントから、数名規模の専門会社まで、規模の幅が広い点に留意が必要です。
視点2:公共と民間では、調査の意味合いが違う
公共の調査は、構造物の設計と維持管理のための詳細な地盤情報を得ることが目的です。一方、住宅の調査は、限られた予算の中で、地盤の弱さや沈下のおそれを見つけ、必要な対策を判断することが主眼になります。同じ「地盤調査」という言葉でも、深さ、精度、報告書の水準は大きく異なります。
視点3:制度は調査の周辺を定めているにすぎない
登録制度は事業者の要件を、住宅瑕疵担保履行法は売主等の資力を、それぞれ定めています。どの土地でどの手法の調査を何か所行うかという個別の判断は、設計者と調査会社に委ねられています。個別の土地の判断は、専門家への確認が前提になります。
一次情報の確認先
本ページで参照した官公庁・業界団体・各社公式サイトの一次情報です。数値や制度は更新されるため、最新の内容は各リンク先でご確認ください。
