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規格名や試験条件は、公表されている規格の紹介資料に基づく整理です。実際の試験条件は、最新の規格票(JIS)と各発注者の仕様書で確認してください。
調査手法を選ぶ前に:何を知りたいかで手法が変わる
地盤調査の手法は、大きく「地盤を掘って試料を取る方法」「地中に器具を押し込んで抵抗を測る方法」「地表から波や電気を使って地下を推定する方法」「採取した試料や現地で載荷して調べる方法」に分けられます。どの手法にも得意な点と限界があり、知りたい情報が違えば、選ぶ手法も変わります。支持層の位置を知りたいのか、土の種類や層の重なりを見たいのか、液状化の可能性を調べたいのか、地下水の位置を確認したいのかによって、必要な情報は異なります。
調査の費用や期間も手法によって差があります。埼玉県が公開している戸建住宅の液状化対策の案内では、深さ5m~10m程度の浅い地層を対象とするスウェーデン式サウンディング試験が約5万円、サウンディング試験に土質試料の採取と試験を加えた液状化判定が約10万円、ボーリング調査が約30万円とされています。これらは一般的な場合の目安で、敷地の条件や調査の内容によって変わります。住宅では費用との兼ね合いで簡易な手法が、土木では精度を優先した手法が選ばれやすい背景には、こうした費用の違いがあります。
ボーリングと標準貫入試験(N値)
ボーリング調査は、地盤に孔を掘り進めながら、土や岩の試料を採取し、孔内で試験を行う調査です。掘削した孔を使って標準貫入試験を行い、深さ方向の地盤の硬さを連続的に把握するのが、一般的な組み合わせです。標準貫入試験は、JIS A 1219に規定された原位置試験で、全地連の技術発表の記載によれば、質量63.5kg±0.5kgのハンマーを760mm±10mmの高さから自由落下させてロッド頭部のアンビルを打撃し、ロッド先端のサンプラーが地盤に300mm貫入するまでに要した打撃回数を、N値として測定します。
N値が大きいほど、その深さの地盤が硬く締まっていると読むのが基本です。砂質土では締まり具合を、粘性土では硬さを推定する目安になり、基礎の支持層の選定や、杭の長さの検討に使われます。サンプラーの先端には試料が入るため、深さごとの土質を目で確認できることも、この試験の大きな利点です。ボーリングで得られた情報は、後述するボーリング柱状図にまとめられます。
一方で、ボーリングには機械と人員、足場が必要で、費用と日数がかかります。敷地の広さや搬入路の条件によっては、機械が入らないこともあります。また、全地連の2023年の発表では、標準貫入試験が頭部を打撃する方式であるため、ロッドの摩擦などでエネルギーが減衰し、打撃効率を考慮して補正したN値を使う検討が紹介されています。N値という一つの数字の背景には、装置や手順による差があることを意識しておく必要があります。
SWS試験(旧スウェーデン式)
戸建住宅の地盤調査で長く広く使われてきた手法が、スウェーデン式サウンディング試験です。日本建築総合試験所の資料によると、JIS A 1221は2020年10月26日に改正され、試験名称が「スウェーデン式サウンディング試験」から「スクリューウエイト貫入試験」に変わりました。略称は従来どおり「SWS試験」とされています。改正では、Wswを「静的貫入最小荷重(N)」、Nswを「換算半回転数」とする定義の明記、Wswの値を50、150、250、500、750、1000N以外にも設定できること、スクリューポイントの仕様の追加、硬い表層で事前削孔を可能とする旨の明記などが行われました。
この試験は、先端にスクリューポイントを付けたロッドに荷重をかけ、荷重だけで沈む場合はその量を、沈まなくなった段階では回転を加えて貫入する量を記録して、地盤の強さを推定します。小型の機械で短時間に行え、試料は採取しないため、費用を抑えやすい点が住宅向けの調査に適しています。公共の仕様書でも名称の切り替えが進んでおり、横浜市の仕様書や富山県の資料に、「スクリューウエイト貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)」という併記が見られます。
限界もあります。試料を採らないため、土質は貫入時の音や感触、後から得られる情報から推定することになります。また、礫や転石、硬い層があると貫入が止まり、その下の地盤の状況が分からないことがあります。調査の深さも、ボーリングに比べると浅い範囲が中心です。液状化の判定では、サウンディング試験に土質試料の採取と試験を加えた方法が用いられます。
表面波探査、平板載荷試験、室内土質試験、物理探査
表面波探査
地表で起こした振動が表面波として伝わる速度を測り、地盤の硬さの分布を推定する物理探査の一つです。地面に孔を開けずに、広い範囲を比較的短時間で調べられる点が特徴で、住宅地盤の調査に使う事業者もあります。比較表のページに掲載しているビイックは、表面波探査法による地盤調査機器の製造・販売と、同手法による住宅地盤調査を事業としていることが、公式サイトに記載されています。ただし、試料は採取できないため、土質の確認や数値の裏付けには、別の試験との併用が検討されます。
平板載荷試験
地盤の上に載荷板を置いて荷重をかけ、沈下量との関係から、その深さの地盤の支持力特性を調べる試験です。実際に荷重をかけて確かめるため、基礎の直下に近い条件での地盤の反応が分かる一方、影響が及ぶ深さは載荷板の大きさに依存します。サムシングの公式サイトには、SWS試験、ボーリング調査・標準貫入試験とともに、平板載荷試験が調査方法の一つとして挙げられています。
室内土質試験
ボーリングや試料採取で得た土を試験室に持ち帰り、粒度、含水比、密度、強度、圧密特性などを測る試験です。現場の簡易な試験では分からない、土そのものの性質を数値で示せます。基礎地盤の沈下の予測や、液状化の判定、盛土材料としての適否の判断などに使われます。
物理探査(弾性波探査・電気探査など)
地表から弾性波や電気を使い、地下の速度分布や比抵抗分布を推定する手法の総称です。トンネルやダムなど、広い範囲を効率よく調べたい土木分野で使われます。孔を開けないため、ボーリングの調査地点の間を補う役割を持ちますが、結果は間接的な推定であり、ボーリングによる確認とあわせて解釈するのが基本です。
手法ごとの特徴を並べる
ここまでの内容を、各手法の主な用途と注意点という観点で一覧にします。数値の目安として挙げているのは、規格や自治体の資料で確認できる範囲です。
| 手法 | 主に分かること | 試料の採取 | 主な利用場面 | 注意点・限界 |
|---|---|---|---|---|
| ボーリング+標準貫入試験(JIS A 1219) | 深さごとの土質、N値、地下水位 | できる | 土木・中高層建築・詳細調査 | 機械と費用が必要。N値は装置の効率の影響を受ける |
| スクリューウエイト貫入試験(JIS A 1221) | 荷重と回転数による貫入抵抗 | できない | 戸建住宅・小規模建築物 | 浅い範囲が中心。礫や硬い層で貫入が止まることがある |
| 表面波探査 | 地盤の硬さの分布(速度) | できない | 住宅地盤・広い範囲の把握 | 推定は間接的。土質確認には別の試験が必要 |
| 平板載荷試験 | 載荷板直下の支持力特性 | できない | 基礎の支持力確認 | 影響の深さは載荷板の大きさに依存する |
| 室内土質試験 | 粒度、含水比、強度、圧密 | 必要(採取試料を使う) | 沈下・液状化・材料の検討 | 採取試料の乱れや代表性に左右される |
| 物理探査(弾性波・電気など) | 速度・比抵抗の分布 | できない | トンネル・ダム・広域調査 | 結果は推定。ボーリングでの確認とあわせて解釈する |
2026年10月時点、規格紹介資料・自治体資料・各社公式サイトに基づく整理。最新の規格や仕様は、規格票と各発注者の仕様書で確認してください。
住宅と土木で調査が分かれる理由
同じ「地盤を調べる」仕事でありながら、住宅と土木で使われる手法が分かれる背景には、荷重の大きさ、影響の及ぶ深さ、調査にかけられる費用の三つの違いがあります。2階建て程度の戸建住宅の荷重は小さく、基礎が影響を与える深さも限られます。このため、深さ5m~10m程度の浅い範囲を、簡易な手法で調べることが合理的とされています。一方、橋や高層建築、ダム、堤防は荷重が大きく、影響する深さも大きいため、支持層まで直接確認できるボーリングと標準貫入試験を基本にする必要があります。
ただし、住宅でも常に簡易な調査で足りるとは限りません。液状化の判定では、サウンディング試験に土質試料の採取と試験を加える方法が用いられ、費用も上がります。また、造成地や軟弱な地盤、地下水が浅い土地などでは、より詳細な調査が必要になる場合があります。簡易な調査で結論が出ない場合に、追加の調査を行うかどうかは、設計者と調査会社の判断になります。
この違いは、ブログ記事「ボーリングと SWS 試験の違い——住宅と土木で調査が分かれる理由」でも、実務の視点から整理しています。手法の選択は、費用の問題だけでなく、地盤が建物に与える影響の大きさと、求められる精度から決まるものだと理解すると、見積書や報告書の読み方も変わってきます。
一次情報の確認先
本ページで参照した官公庁・業界団体・各社公式サイトの一次情報です。数値や制度は更新されるため、最新の内容は各リンク先でご確認ください。
